最終回
好きやねん
#地上
白昼、次々と道端に転がる男達。
それを見ていた、ある女性が、
突然昏睡になり、
寝込んだ、連れの男性を、
必死に揺さぶり起こす。
女性
「ねぇ、起きてよっ!・・・・どうして、いきなりっ!」
幻魔・ケセランパサラン(image・ブルゾンちえみ)「あーっははははは・・・クズな男達は、みーんな、見果てぬ夢に溺れていけばいい。(笑)」
何かを振り撒きながら、街中を練り歩く幻魔。
そして、夢遊病のように、フラフラと幻魔の後を歩く男達。
その後を追う、もう一人の関西天使。
関西天使 ふうちゃん(image矢倉風子fromNMB48)
「なんかアイツ早い・・・、歩いてるはずやのに、なんかスポーツカー並みや・・・」
幻魔ケセランパサランは、しつこく追いかけてくる天使を振り払うために、背高のブリキ男達に顎で合図を送る。
ふうちゃん
「な、なにっ?」
ふぅちゃんの前後に、立ち塞がる男達。
錻男①
「ケセランパサラン様の邪魔する奴は・・・」
両脇に刺した長剣を抜く錻男①
錻男②が背後で、2丁拳銃を構える。
錻男②
「絶対に、倒す!」
関西天使が居直り、
視界を広く取るため、
錻男たちが見えるように、
何気に横を向き、
腕を組ながら、仁王立ちする。
関西天使・ふぅちゃん
「へーっ、兄ちゃんたち、ガチでウチと、ケンカするん?(笑)( ̄▽ ̄) 」
錻男①
「当たり前だ‼」
挟み込むように、
天使に向かって、
長剣をスライドさせるが、
ふぅちゃんは、
タイミングよく、
長剣の先端に飛び乗った。
ふぅちゃん
「あかんやん?(笑)( ̄▽ ̄)」
ふぅちゃんが、錻男②に背中を向けた瞬間、発砲音が響く
一発目は、
背後から右ほほを掠め、
二発目は、左脇の下を間一髪で掠めた。
ふぅちゃん
「うちな、もともと人間やってん・・・ダンス好きで、音感は半端ないねん(笑)( ̄▽ ̄)」
錻男の長剣が、再び左右に拡げるようにスライドする瞬間、トランポリンのように飛び上がるふぅちゃん。
関西天使・ふぅちゃん
「よっ!(笑)( ̄▽ ̄) 」
着地し向かい合う、天使と錻男達。
錻男①「アタック!」
突然、掛け声を1つ上げ、
長剣を持った左右の腕を、
ブンブン交差させたりして振り回しながら、
ふぅちゃんに迫ったり離れたりしてる。
ふぅちゃんは、ジタンダを踏む。
ふぅちゃん
「もおっ!なんやねんなぁっ!来んならコイや!」
錻男②「なら、そうするよ。」
突然放たれた、鈍い銃声
ふぅちゃんの眉間の寸でで、誰かが、
ふぅちゃんの目の前に立ち、左手で、
瞬時に、銀の弾丸を握り潰した。
ふぅちゃん
「さ、さや姉❗」
関西天使・さや姉
「またせたなぁ?ふぅちゃん(笑)( ̄▽ ̄) 」
さや姉の姿(けはい)を感じ、振り向く、
幻魔・ケセランパサラン。
ケセランパサラン
「あら、消滅しなかったのね?(笑)」
ケセランパサランが、
瞬間移動した時には既に、
さや姉と ふうちゃんが、
刑事ドラマのように、
錻男達を取り押さえていた。
さや姉「どや?(笑)( ̄▽ ̄) 」
ふぅちゃん
「うちらはな、
ガチでやらへんでも、
さや姉が居れば、
お茶の子さいさいやねん!(笑) 」
ちょっと寂しげな表情を浮かべた、さや姉。
ふぅちゃん「さや姉?・・・どないしたん⁉」
さや姉「ん?・・・いや、ナンでもないねん。」
古びたフランス人形の廻りに、複数の薔薇のつたが蠢く、ケセランパサラン。
幻魔・ケセランパサラン
「ねぇ、あなた達が抑えてるのって、誰?(笑)」
ふぅちゃん
「そんなん決まってる・・・ん?」
さや姉
「くるみ割り・・・💂人形⁉」
天使達が抑えていたのは、
バッキンガム宮殿を護る、
衛兵の形をした、
くるみ割り人形だった。
ケセランパサラン
「キャリアウーマン、らしくはないわね?(笑)」
ケセランパサランは、複数の薔薇のつたを伸ばし、ふぅちゃんを捕らえて、高く掲げた。
さや姉「ちょ、・・・なにすんや!」
ケセランパサラン
「ねぇ、勝負しない?」
捕らえたふぅちゃんの背後に、もう一人、拘束されたまま、誰かが高く掲げられた。
さや姉「うわ、おっさんっ!」
死にぞこなった男は、生命力を吸われ、かなり窶れている。
さや姉「勝負ってなんや!」
焦らしトークの幻魔。
ケセランパサラン
「キャリアウーマン?・・・貴女も、天使の端くれなら、ちゃんと答えられるわよね?」
さや姉「答え次第で、なにする気や?!」
さや姉の、瞬時の怒りに反応した妖刀・虎鉄が、ゆっくりと鈍った光を放ち出す。
さや姉は、刀から発する妖気に囚われかけている。
さや姉「き、(斬りたいっ・・・コイツから、ごっつう、血を出してみたい・・・)・・・・」
さや姉の後で囁く、姿なき界王
姿なき界王
「怒るは、地獄ですよ。」
妖気に苦しむ さや姉
さや姉「だったら、こんな刀持たすなやっ!」
幻魔には、界王の姿は見えない。
ケセランパサラン
「あら、情緒不安定ね?(笑)」
叫ぶ、ふぅちゃん。
ふぅちゃん
「もう、このおっさん死んどるから、うちを助けてぇ~!」
昏睡状態なのか?、死にかけた男は、うつ向いたままだ。
さや姉
「どするぅ?・・・。どないしょ・・・(めっちゃイライラする。なんでや?)」
ケセランパサラン
「さぁ、答えて頂戴!(笑)・・・天使がぁ、護りたいのは・・・仲間の命か?・・・」
ふぅちゃん
「さや姉❗」
ケセランパサラン
「死に行く、人間達か?・・・・」
妖刀・虎鉄に意識を奪われているのか、天使の形相が、次第に険しくなる・・・・。
ケセランパサラン
「さぁ、答えよ!」
虎鉄の刃が、ケセランパサラン本体の、フランス人形の胸部に突き刺さる!
ケセランパサラン
「なっ!、なにぃ?・・・・」
さや姉の脳裏に、誰かの思い出が飛び込む。
#回想・アンティークショップ
今より美しかった、
フランス人形を中心に、
両脇には近衛兵の姿をした、くるみ割り人形が、
まるでフランス人形を護るように、
ショーケースに佇んでいる。
フランス人形(ケセランパサランの本体)「私は、愛されたかった。・・・・ずっと、ずっと、誰かの側に居たかった。・・・・」
飛び交う戦闘機、爆撃で焼き付くされる町並み。
店主だろうか?亡くなった老人が庇うように、フランス人形と近衛兵の人形が護られていた。
フランス人形
「ただ、それだけだった。」
時は流れ、数年前、町内会のバザーに出品される人形達。
フランス人形
「私のからだが、古ぼけて行くたびに、拾われても、金と引き換えに棄てられる始末・・・」
さや姉「なんや・・・なんか、おっさんと似てるやん・・・・」
フランス人形
「そう、あの男も、私を捨てたの・・・・」
さや姉「え?」
#(回想)数年後、バザー会場
キャバ嬢と死にかけた男は、日中からへべれけでバザーに現れた。
さや姉「何しとんねん!やっすい女(スケ)つれ回しとって!」
だらだらっと、死にかけた男に甘えるキャバ嬢。
キャバ嬢
「ねぇーえー、フランス人形ちょーだーい?(笑)( ̄▽ ̄)」
死にかけた男
「え?、なにすんの?」
キャバ嬢
「おにぃちゃんが遊びに来ないからぁ~、となりでぇ、ねんねすんのぉ~キャハハ。」
死にかけた男は、何処かで拾った財布から、札束を取り出して封を切り、フランス人形を買った。
さや姉「あんのボケぇ!」
数日後、死にかけた男は、キャバ嬢にフラれた腹いせに、同居してた部屋に、残されたフランス人形を、リサイクルショップへ売ってしまった。
雨が降るなか、寂しそうに野外に置き去りにされる、フランス人形。
フランス人形
「その時私は誓ったの・・・この国の男を食い潰すっ・・・・てねっ?(笑)( ̄▽ ̄)」
闇夜の曇り空の隙間から、
一筋の光が、
人形達に降り注ぐと、
フランス人形達は、人間に成った。
#回想 が終わり、
ケセランパサランの体での一部である、
薔薇のつた達が、
一斉に枯れ始め、
幻魔の体から、
ひかりの欠片達が、
上空に立ち上ぼり出した。
さや姉
「あんたも、寂しかったんやね・・・・?」
フランス人形
「こんど生まれ変わるなら・・・・あなたのような、天使に、なりたい・・・・。」
一瞬、ストロボを焚いたような光が弾けると、フランス人形は、バラバラに成った。
ふぅちゃん
「なんか・・・、なんかしれへんけど・・・切ない・・・・。」
深いため息を、夜空を見上げながら、1つつくさや姉。
さや姉「なぁ、ふぅちゃん?」
ふぅちゃん「なにぃ?改まって(*´ω`*)・・・」
さや姉「うちな、冥界に堕ちてん・・・・」
目を覚ます、死にかけた男。
死にかけた男。(image斎藤工)「あ。・・・?」
困った表情で仁王立ちする、さや姉
さや姉「あ?・・・や、あらへんやろっ?(笑)( ̄▽ ̄)・・・てゆうかあんた、もいっぺん死んだ方がええんちゃう?・・・ごりっごりに痩せとんやから( ̄▽ ̄)このまま。ジャストなうやで(笑)」
ふぅちゃん「さ、さや姉?」
死にかけた男に詰め寄るさや姉
さや姉「しっかし、ホンマあんたな、思い遣り・・・無さすぎや。」
死にかけた男
「え、あの・・・なんかすみません。」
さや姉「あんな?、あんたを苦しめとんのは、ホンマはあんたや。・・・・寂しがりで、立ち回りが下手なのは、よう解ったけど・・・・」
体の消滅が始まる、さや姉。
ふぅちゃん「さや姉っ?」
さや姉「え、?・・・なんでや?、まだ思いを告げてへんのに?」
ふぅちゃん「さや姉、冥界に堕ちたって・・・うそやろ?」
死にかけた男
「あの・・・また、話が遠いんですけど?」
死にかけた男の言葉に、いい加減頭に来た、関西天使・ふぅちゃん。
ふぅちゃん
「はぁ?(怒)・・・
あんた、
何ゆうてんや?・・・・
あんたの為に、
天上界の務めをなげうって、
冥界に堕ちたために、
天使の座を捨てざるを得なかったんやで‼
ほんま解っとんのかっ?!」
今にも食い付きそうな、ふぅちゃんを止めるさや姉。
さや姉
「あかんっ、ふぅちゃん。ルールはルールや。」
さや姉の下半身は、既に消滅している
ふぅちゃん
「さや姉!」
さや姉
「これはうちの運命や。・・・でもうちは、後悔してへん。おっさんには、やきもき?させられたけどな?・・・これも所願満足や(笑)」
死にかけた男は、消滅しかけた、さや姉に詰め寄る
死にかけた男
「ちょっとまってくれ‼、私はまだ、まだ貴女に、聞いてもらいたいことがあるんだ‼・・・・頼む、行かないでくれ‼」
さや姉がふぅちゃんに、何かを伝えた。
ふぅちゃん
「うちには無理や!・・・さや姉から、なんも引き継ぎしてへんのにっ!」
・・・・・・・
#回想・死にかけた男
あれは・・・・
夢だったのか?
神も仏も信じない、
私の目の前に、
舞い降りたセゾン・・・・
彼女は、ちっぽけな私に、何を伝えたかったのだろうか?
#回想が明け・目覚ましの音
死にかけた男が、目覚ましの音を止めると、間髪なしに、
関西弁の女性が、フライパンとお玉で、ガンガン叩きながら、男を起こす。
女性
「おいっ!樫見屋新太郎‼、遅刻すんでっ!」
死にかけた男(樫見屋新太郎・image斎藤工)
「え?、なんで君が・・・ここにいるの?」
満面の笑みを浮かべるさや姉。
(おわり)