cast
放浪のカメラマン・鈴井
・・・・・・・鈴井 貴之
鈴井の妻/謎の女性 ・" ムンク "
・・・・・・・藤田 朋子
編集長・藤村
・・・・・・・藤村忠寿
副編集長・嬉野
・・・・・・・嬉野雅道
鈴井の後輩・大泉
・・・・・・・・大泉 洋
「ヨーロッパ・リベンジ」より
フィクションストーリーアレンジ・
空想携帯小説家
scene
「前奏曲」
春近き2月・・・・
街は少しづつ、
ゆっくりと、
明るく色づき出してきたのに・・・・
(週刊紙編集室・・・
鈴井の写真を見て、
業を煮やし、
怒りに任せて、
スリッパの片方を、
鈴井に、
思いっきり投げ付ける、編集長・藤村)
編集長・藤村
「バカ野郎‼・・・
ぬぁんで、
たけぇカメラ使って、
こんなシケタ写真ばっかり、上げてんだぁ?・・・
金になんねぇだろっ❗」
(苦い顔をしたまま、うつ向く鈴井)
鈴井「僕の写真は、事実を伝えているんです。」
藤村
「あーっ、
くだらねぇ~っ‼・・・・、
まぁだ、
アイドル達の、
男漁りの瞬間(スキャンダル)のほうが、
よっぽど、金になったなぁ~っ‼(苦笑い)」
(専用の椅子に、どすんと座り、飽きれがおで、両腕を上げながら、あくびをする、藤村。)
鈴井「変ですか?」
(鈴井の顔を、下から覗き込むように睨む、藤村)
藤村「あ?・・・
なぁに?・・・
俺にいってんの?(笑)・・・・
今なぁ、鈴井ぃ~っ・・・
御上から、
いわれてんだっ。
・・・・現実(リアル)から、目をそらせるようにな(笑)。」
(遠くのデスクから、鈴井と藤村を、心配そうに、見つめている嬉野)
藤村「ところで、スリーエスってしってるか?鈴井?」
鈴井「コンビニ?・・・いや、服の・・・?」
(藤村のデスクに近付く、嬉野。)
副編集長・嬉野「鈴井くぅん、スリーエスっていのは、スクリーン(映画)、スポーツ、セックス(性産業、風俗)の事を言って、大衆先導になってるんだよ。」
鈴井「大衆先導・・・・」
藤村「あぁ、
かつてのダッコちゃん人形だって、
パンダだって、
ルーズソックスだって、
俺ら(出版業界)が、
流行らせたんだ。(笑)・・・・
そこら辺の、下手(のーたりん)な政治家より、
俺らの方が、
よっぽど、
ましだぜ。(笑)」
(・・・・その時、鈴井は、決意した。)
鈴井「もういいです。僕がしたいのは、大衆先導じゃない。」
藤村「はぁっ⁉なにがだぁ!・・・・現実を知らされたら、市民は何もしなくなるだろ?・・・そしたら・・・・」
(辞表を差し出す、鈴井。)
嬉野「まぁ、まあ、藤村君も、血筋を上げないで、ねっ・・」
(藤村達に目を向けず、スタスタと、その場を後にする鈴井。
・・・一方、地方へ取材にいくために、車に機材を詰め込む、大泉。)
鈴井の後輩・大泉
「あ、鈴井さん、地方取材に行きますよ!(笑)」
(伏し目がちに、早口で別れを告げる鈴井。)
鈴井「僕はもう、雑誌社(ここ)へは来ない。」
大泉「えっ?・・・・はぁっ?・・・ちょ、すすす、鈴井さぁん!」
(鈴井の後を追い、大泉に制止を促す、嬉野。)
嬉野「ちょっと、大泉くぅん、鈴井さんを止めなさいよっ!」
大泉「止めなさいよって言われても、スタコラ行っちゃったじゃないのっ‼」
(大泉、駐車場内のママチャリで、鈴井の後を追う。)
大泉「鈴井さん、仕事をほっぽりだして、どこ行くんですか?」
鈴井「フィヨルド・・・」
大泉「は?」
鈴井「妻と想いでの、フィヨルドへ行く・・・。おまえは、着いてくるな。」
大泉「鈴井さん、編集長と何かトラブったんですか?」
鈴井「意見が合わないから、殴る前に辞めたんだ。
・・・・大泉君、君は、
世の中が嘘まみれでも、生きていたいかい?」
大泉「鈴井さん、何を突拍子の無いことを・・・・」
鈴井「真実を知るのは、ツラいよ・・・・
でも、乗り越えていくためには、知るしかないんだよ!」
(ヨーロッパへ旅立つ飛行機のなか、
鈴井は、景色を眺めながら、妻との想い出を振り返る。)
(回想)
鈴井:僕が、あの時・・・
君を止めていたら・・・
(食器が壁にぶつけられ、粉々になる音が、数回続く、新築の一軒家。)
鈴井「やっ、止めないかっ‼」
妻(藤田朋子)「じょーだんぢゃないわよっ‼・・・
いつまでも、゛釣った魚 ゛に、餌をやらない奴に、
何がわかんのよぉ!」
鈴井「僕はカメラマンを生業としてるから、仕方ないじゃないかっ‼」
(食器を掴みながら、夫の鈴井に食って掛かる妻。)
妻
「貴方は、戦場カメラマンじゃないのぉっ‼・・・
普通のカメラマンなのっ‼・・・・
それがっ・・・・
それが、なんで原発事故のあった、
港町に行くのよぉ!おかしくない?」
(うつ向きながら、反論する鈴井)
鈴井「僕は、現場が、戦場であれ、ジャングルであれ、・・・・それが、原発事故の、港町だったとしても、真実を遺したい。人の営み、町並み、子供たちの笑い声・・・・」
(鼻で笑う妻)
妻「は?・・・そんなんで、食べていくの?今後も?この先も?」
(妻の前で、静かに正座する鈴井)
鈴井「生活が成り立ってないのは、ほんと、申し訳ないっ‼」
(荷物が詰まった、
キャリーバックを、二階から音をたてながら、引き摺り降ろす妻。)
鈴井「ちょっ・・・どこいくんだいっ‼」
(玄関の扉前、出ていく妻の右肩を掴みながら、自分に振り向かせる、鈴井。)
妻「十年目の新婚旅行。」
(妻は、鈴井と目を合わせること無く、自宅を後にした。)
(回想、飛行機の客席なかの鈴井。)
鈴井・いまも、あの時の失敗は、僕の中の思い出(トラウマ)さ・・・・