空想携帯小説家ht2355(20120708)'s blog

空想携帯小説家(山本 繁一)の作品を公開しています。

反転の月

scene1「邪教の家に生まれて」

時は、

西暦20××年、3月。

 

国内における、国内最大の原子力発電所の爆発事故から、8年。

 

日本政府は、事故の顛末を、

内部告発から、隠しきれなくなり、

事態収集が、着かない事が、明かされてしまう。

 

その事態収集を、大義名分に、

政権与党に長年入り込んでいた、

政党・広明が、

 

政局の混迷(どさくさ)にまぎれて、

内閣不信任決議案を、

水面下で野党を組み込み、提出と同時に、

総理大臣候補を擁立した・・・。

 

(東京、広明 党本部)

 

雛壇には、壇下の人々を、見下すような眼差しで睨み付ける幹部たち。なかには、袈裟をつけた、スキンヘッドの男たちが数人、横並びで座っている。

 

壇下の人々の話し声は、交わされる日本語は、年ごとに少なくなり、

今やその雑談の中身は、ハングルや、中国語、ベトナム語などを話す人々が増えてきた。

 

成田 明夫

「なぁ、純二、最近の学会ってアジア系の信徒が、おおくねぇ?」

 

葛城 純二

「なんだよぉ、今更。これは、沼田先生の御尽力で、世界交付しだしてんだってぇ~のっ!」

 

(葛城)この時の俺は、草加学会の素顔を、

何も知らなさすぎた。

そして、どこの誰だか知らねぇ、

沼田大作と言う男を、

勝手に師匠だと、ガキの頃から、思い込まされていた。

 

(力強い、オーケストラの生伴奏が、会場いっぱいに響く。)

 

司会「さぁ、栄光の9十周年へ、沼田先生の指導をもとに、広明を飛躍させて行きましょう!」

 

(壇上の、中央奥にある、何かを隠した垂れ幕を、雛壇の幹部たちが、一斉に引くと、満場の拍手が鳴り響く。)

 

広明 党員①

「沼田センセー!」

広明 党員②

「まんせーっ!」

 

(垂れ幕の下から、沼田大作のブロンズ像が現れた。)

 

(葛城)そのあと、おれたちは、何時ものごとく、沼田のタヌキ爺が出てくるまで、歓声を上げ、手が痺れるまで、拍手していたが ・・・

 

(司会に、何かメモを渡すスーツ姿の男。)

 

司会「えぇ・・・・皆様、・・・・・御静粛願います。」

 

(ディズニーのパレードのような、力強い騒ぎが、一気に静まった。)

 

司会「ぬ、沼田先生から、メッセージを戴きました。」

 

(沼田のメッセージらしきメモを、代読する司会者。会場のざわめきが、一気に静まる。)

 

(葛城)その、沼田のメッセージとやらは・・・、

【我、民衆の、霊(たましい)の自由を奪還し、四半世紀が流れた。

 

葬式ブッポーどもは、

民衆のうねりである、草加学会の、鉄槌を受け、もはや、風前之灯である。

 

青年よ、建て!

この日本は、日本人だけのものにしてはならない!

 

いまや、我兄国である、南北朝鮮は、

先の対戦から、汚れきった日本へ、

最期の鉄槌を下すべく、

警察、消防、役人、国会などへ同胞を送り込んだ。

 

時は、もうじきだ。さぁ、民衆大勝利を飾って行こう!】)

 

(葛城)ぼぉっと聴いていれば、さぞや、耳障りのいい話だが・・・・異変に気付かなかった俺らは、今の生活苦を覆す事が、優先事項だった。当時も今も、誰もそれを口にしなかったが。

 

そして、数ヶ月後、俺の住む街にも、国政選挙の風が吹き、

 

婦人部から、手弁当で候補者を、応援して欲しいと、人材難を理由に、いやがる妻に、再三の、夜討ち朝駆けで追い込みをかけていた。

 

(葛城の回想。)

(ある日曜の朝、身重な身体を押切り、キッチンで、朝食の支度をする、三穂子。)

 

葛城「おはよぉ。なんだよ。日曜の朝位ゆっくりしなよ。(笑)」

 

三穂子「うん、昨日の夜も、赤木さんから、ラインメールがしつこくて、一睡もできなかった(笑)。」

 

葛城「あの、口紅ババァっ!俺が拒否るからって、三穂子にっ!」

 

(急に苛立った葛城は、庭先に舞い込んだ雀に、火のついた、タバコを投げつけた。)

 

三穂子「じゅんちゃん!タバコを小鳥に投げつけない!」

 

(露骨に不機嫌になる、葛城を尻目に、朝食の支度を続ける三穂子。)

 

葛城 三穂子

「あたしっ、頑張って見るねっ!元気な赤ちゃんが産まれるならっ!(笑)」

 

(葛城)

妻の三穂子は、身重な体で、謙虚に乗り越えようとしていた。

 

(選挙カーで、凱旋活動中の、政党・広明の立候補者と、三穂子。)

 

葛城三穂子

あなたの町の、大きな力、小角慶次郎。小角慶次郎に、清き一票を、ご投票ください。」

 

車外の通行人に、全力で作り笑いする、小角慶次郎。

三穂子は、ウグイス嬢のスカートが短いことを、言い出そうとしていた。

 

三穂子「あ、あの・・・」

小角は、もじもじする三穂子を、顔は、満面の笑顔だが、小声で威嚇する。

 

小角慶次郎「なにかね?」

(左手は、通行人に手を振りながら、右手の白手を、口でくわえて取りながら、

身重な三穂子の左太股を、静かに嫌らしく撫で始めた。)

 

三穂子「や、止めてくださいっ!。」

(三穂子の裏で座っていた、青年部員が、三穂子の口をふさぎ、シートを倒した。

騒ぎを車外に漏らさないために、三穂子から、マイクを奪い、車のカーテンを閉めた。)

 

婦人部長「葛城さん、あなた、沼田先生のお弟子様が、触ってくれるのよ!こんなチャンスは、滅多にないのよ!罪障消滅のチャンスなのよ!わかるっ?」

 

小角慶次郎「旦那さん、家のローン・・・たいへんだろ?(笑)」

 

(三穂子は、誰にも話したことがないのに、家のローンの話が漏れている事に、驚きを隠せず、再び、移動中の選挙カーで必死にもがき出す。)

 

小角慶次郎「俺の女になれ。 生活は、一変するぞぉ~(笑)」

 

(小角の選挙カーは、246沿いを走り出した。

凱旋活動はテープをながし、車内は地獄と化した。)

 

小角「おー、おーっ、最近の女は熟れ熟れどが、凄まじいなぁ~。」

(ヘッドロックのように、三穂子の口を押さえる男子部が、三穂子の異変に気がつく。)

 

男子部員「やべ、破水してる!」

 

女子部幹部「はらぼての癖に、あへついてんじゃねーよっ!ババア!(笑)」

 

(顔面に唾を吐きつけられても、必死に抵抗する三穂子。

 

小角が、運転中のなかで、行為に入る寸前、三穂子の口元から、スッと一筋の血が流れた。

 

そして、その日の夜遅く、日帰りの出張から、三穂子が眠る病院の霊安室に駆けつけた、葛城純二。)

 

作品イメージ曲

手紙

THE BOOM

 

葛城純二

「いったい、なにが・・・起きたんだ?。

(な、なんで、こんなことに?)」

 

婦人部長

「み、三穂子さん、突然産気付いて・・・」

 

女子部幹部

「私が、救急車を呼ぼうとしたら・・・・もう。」

 

(三穂子の首もとに、なにかで締めた跡が、薄くあり、そして、何かを隠すように、早すぎる死に化粧に、違和感を隠しきれない葛城。)

 

小角慶次郎「私の選挙期間中に、死人が出るなんて、とんでもないことだ!何て縁起が悪いっ!」

 

(小角に向かって、深々と謝罪する草加学会の運動員たち。そして、純二の孤独を満たし続けていた、唯一の妻を、突然喪い、悔しさのあまり、うつむき、嗚咽を必死に噛み殺しながら、両手拳に力を込める葛城。)

 

小角慶次郎「葛城君?だったかね?・・・この件を、くれぐれも、マスコミに・・・ちくるなよ?」

 

(霊安室を足早に立ち去ろうとする、小角とその一味。)

 

葛城「まてよ。」

(霊安室をでて、呼びつけた、葛城の方に振り向かず、立ち止まる小角。)

 

婦人部長「葛城さんっ、いい加減にしてっ!。」

 

葛城「は?・・・」

 

婦人部長「小角慶次郎先生は、沼田大作先生の、一番弟子として、この日本を改革していくのよっ!わかる?・・・中卒で、薄っぺらの、あなたの頭に、日本の将来のビジョンが語れるのっ?」

(詰め寄る婦人部長の顔を視ないで、小角に声をかける葛城。)

 

葛城「謝れよ。・・・三穂子に、ちゃんと土下座して謝れよ!」

 

小角「しつっこいなぁー」