Another songs(後編)
サンタクロースのトラックは、小雪舞う軽井沢駅のロータリーに着いた。
Another MEL(image芦田愛菜)
「ありがと、おじさんっ❤️」
サンタクロース(image小日向文世)
「メルちゃん、ボクはいま、サンタだから、サンタさんって、言ってね?(笑)」
メル「ごめんなさい。」
小井戸勇気(image小関裕太)
「さ、寒いっ!・・・は、早く暖を取りたいっ!」
トナカイ・オオタケ(image大竹一樹)
「うっせーな、ワケぇくせに。」
「まままま、オオタケさん、人間に噛み付いてもしょうがねーし。(笑)」
小井戸「あなたたちも、見た目は、人間に見えますけど?」
ミムラ「ほんと、こまけーな、コイツ。死んで当然かもな(笑)?」
オオタケ「でも、こっちが迷惑だわ!」
バインダーに着けていたリストを、見終わったサンタが、メルたちに声をかける。
サンタクロース
「いいかい。本来、時間は帰らないもの。
挫折にまみれ、一瞬を燃えるように、
生きる人も居れば、
変化を求めず、
たんたんと、日々を重ね、
一生を終える人もいる。
私は、何かを強いる事はしないが、
自分の判断(意思)で、
後悔しない、一生を送って欲しい。
ただ、それだけさ。」
「でちゃったよ、お言葉。」
オオタケ
「俺らには、そんなこと言ってくんねーし。」
再びエンジンキーを回すサンタクロース。
サンタクロース
「君らは、私の私財だから、特に言うことはない。(笑)」
ミムラ「私物かよっ!」
小井戸に、防寒着を渡すオオタケ。
オオタケ「あー、だりぃ~」
サンタクロースのトラックは、静かにその場を立ち去った。
小井戸「・・・・」
メル「どしたー?」
小井戸「いや、なんでも・・・・」
小井戸の手を握り、何処かへ行こうとするメル。
小井戸「どっ、どこ行くんだよ?」
メル「別荘。」
小井戸「お、俺、ロリコンじゃ、ないし。(・・;)(;^_^A」
メル「となりの国の風習じゃあるまいし、バカじゃん!(笑)・・・これから行くのは、あんたんちの別荘!」
ズンズン手を繋ぎながら、茂みを進むメル。
空から、粉雪が散り始めた。
小井戸「な、なんで、俺んちの別荘ナンだよ。(もう、人のものだろうけど・・・)」
メル「さぁ、着いたら、ちゃんと、相田よし子にコクりなさい!わかった?(さもなければ・・・・)」
うっそうな森林の中に、ひっそりと、たたずむ別荘は、高級感ある、二階建てログハウスだ。
小井戸「結構、車が停まってんなぁ。」
メル「クリスマスパーティーみたい。」
小井戸「高給取りで、いいご身分ですなぁ~」
背の高い、小井戸の突飛な大声に、飛び掛かるように、鼻と口を塞ぐメル
メル「うっさいっ!」
小井戸「(( ̄  ̄;)(い、息ができね。)」
別荘から、数人の女性が出てきた。
女子アナ③「ほんま、これでよし子が幸せになってくれたら、うちは、言うこと無しや(笑)」
首を傾げる、女子アナ仲間たち
女子アナ②「これって、不倫でしょ?」
女子アナ③「何ゅうてん?先輩、奥さんと別れるってゆうてたやん?」
女子アナ①「うちら、それ、初ネタですけど。」
女子アナ②「え?、うそ、よし子の憧れの先輩と、つき・・・」
全力で体で否定する女子アナ
女子アナ③「うそやんっ!うそ、うそぉっ!うちが、不倫なんかするわけないやん!バカクサ(笑;)」
買い出しでも行くのか、女子アナたちを乗せた、一台のワゴン車が、別荘を離れて行った。
小井戸「大したことないなぁ、まるで、所詮酒畜乱輪(犬猫)じゃね~か?・・・で、よし子さんは・・・・」
先輩アナウンサーが、酔いにまかせて、よし子に迫っている。
先輩アナウンサー「良いじゃないか?、相田君。」
スーツの上着を脱ぎ捨てながら、長テーブルの周りを逃げ惑うよし子を、ジリジリと、追い詰めてる。
小井戸「あーあ、こりゃ、スッポリだな?(笑)」
メル「さっさと、コクりなさいよ!小井戸勇気!」
小井戸の右足を、ギュッと踏むメルだったが、何故か痛みを感じないらしい。
メル「?!」
相田よし子
「あ、あの、ちょっと、困りますっ!」
先輩アナウンサー
「君、ほんとは、僕が目かけなければ、採用されなかったんだよ。」
よし子に、疑念がはいり、その場で動きが止まる。
男は、ベリーロールのように、テーブルの上を滑り、よし子の両手を、手錠が掛かったような掴みかたをした。
先輩アナウンサー「俺の女になれよ。俺が潰されない限り、出世ができるぞ。」
よし子の瞳から、悔し涙が流れる。
よし子「・・・・」
男は、よし子の唇を奪ってしまった。
小井戸「あー、やっちまったなぁ~(笑)」
降り積もる雪の上で、時短打を踏むメル。
メル「ふざけんなっ!ばかちん!」
メルの両手の平が、柔らかくひかりのかけらとなり、空に昇ってゆく。
それはまるで、逆さ雪のように。
メル「う、うそだ・・・」
小井戸の両足も、静かに爪先から、消滅しだした。
小井戸「終った・・・。これでいい。これで。」
別荘の雨樋に、背を向け、天を仰ぐ小井戸。
メル「ちょっとまってぇ!」
その小井戸に走りよる、メル。
そして、その背後に、クラッシックカーが近づき、軽くクラクションを鳴らす。
トナカイ・オオタケ「おー、小娘ぇ~(笑)」
トナカイ・ミムラ「あれ、手のひら、どうした?」
あっ!、て、気が付き、背後に手を回すメル。
すべてを知っていたのか、サンタクロースが私語く。
サンタクロース「さて、時間の旅に行きましょうか?(笑)」
ミムラとオオタケは、真っ白な、ずたぶくろを消滅仕掛けている、小井戸に被せ、押さえ付けている。
オオタケ「早くいっちめ~よ、間に合わねぇぞ、このままだと。」
ミムラ「おまえが帰ってくるまで、こいつ、抑えとっから!」
メル「わかった!」
サンタクロースが運転する、クラッシックカーは、別荘から離れ、山を離れた。
メル「おじさん、どこ行くの?」
サンタクロース「彼の、死の直前に行くよ。」
一年前の首都高。
軽井沢に向かう、小井戸の車が、煽り運転に巻き込まれ、その後の追突事故から、炎に包まれている。
煽り運転の加害者
「おっ・・・おめぇが、わりいんだからなっ!」
腰を抜かしながらも、向かいに来た車に飛び乗る男。
ワッと、炎が、クリスマスイブの夜空に立ち上る。
小井戸 勇気
「あっちぃ・・・腹から、血がドバドバ出てる・・・
焼き魚の焼かれる気持ちって、・・・・こんな感じかなぁ(笑)・・・」
遠くで、小井戸を呼ぶ声がする。
小井戸「だ、だれっ・・・」
メル「いっ、いま、助け出すからっ!」
車の後方に積んだ、もみの木に火が移る。
小井戸「む、無理だ。腹は・・・・血が出て、ひっ・・・左足は、挟まってる。」
煙に咳き込みながら、運転席のドアを引っ張ったり、後方席のドアを引っ張ったりして、小井戸を励ますメル。
メル「大丈夫!、私が、何とかするからっ!」
段々、意識が遠退く小井戸。
小井戸「もう、いい。・・・・ほっといてくれ。」
体が再び消滅を始めるメル
メル「だ、だめっ!・・・・。まだ消えないで....貴方が、・・・いま、あなたが死ねば、・・・・私は、生まれないのっ!・・・・・だから、・・・だからっ。生きろぉーっ!、パパぁ~っ!(泣)」
メルの襟首を掴んで、燃え盛る車から、引き離す、大柄の男。
角がない青鬼(imageくっきーfrom野性爆弾)
「おまえ、さがれ。」
メル「え。・・・・」
青鬼「この山、おれの庭。」
運転席のドアを、引き剥がす青鬼。
青鬼「おまえ、死ぬに至らず。」
力ずくで、燃え盛る車から、血まみれの、小井戸をひきずり出す青鬼。
意識を取り戻しかけた、小井戸の視線は、青鬼の足元で、フェードアウトするように途切れた。
そこから、半年を過ぎた、今年のクリスマス。軽井沢の別荘に華やかな、飾りと、色とりどりな、食事が並んでいる。
小井戸(相田)よし子
「また、ここで、クリスマスを家族と過ごせる何てねぇ~(笑)」
小井戸 勇気
「俺もまさか、親父から、別荘を譲ってくれるとは、思わなかったさぁ。」
写真立てを、丁寧に磨く少女。
小井戸
「おい、恵留。あんまり力入れると、割れちまうぞ(笑)」
恵留「じーちゃんは、私の恩人だから?」
小井戸「は?」
写真立てを見詰めると、サンタクロースと、あの冷徹だった、父(小日向文世二役)と重なって見えた。
小井戸「まさか、・・・・」
背広姿の父が、小井戸に頬笑む。
(終わり)