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ロンモンロウ「balloon me」from大塚家具
(本編・主人公の回想)
西暦20××年 6月、俺は、三十代で、ようやく結婚できる・・・・・
それも偶然であった、ファミレスの娘が、
見合い先の、財閥の家族だなんて・・・
(海辺の高台にあるチャペル。そこまで走ってかけ上がる女子高生が1人。)
神父(image温水洋一)「それでは、誓いのキッスを。」
(時おり咽びながら、休むまもなく、教会の扉を激しく叩く女子高生。)
女子高生(image紺野彩夏)「あーけーろーよーっ!」
(主人公は、花嫁のベールを上げる時に、聴き馴染みのある声に、戸惑う。)
杉田一平(image武田航平)
「う、うそだろ・・」
花嫁(image松井玲奈)
「え、だれ?・・・ぺーちゃん、他に誰かいるの?」
杉田一平「ば、バカ言うなよ。」
(扉の外で叫ぶ女子高生。)
南 華林(image紺野彩夏)
「先生!約束やぶんのかよ!」
花嫁「約束?!」
杉田「いーや、いやいやいや・・・」
花嫁「どうゆうこと?」
(教会の扉が開く)
華林「一平!」
杉田一平「か、華林・・・」
(フラッシュバックした瞬間、時は、三年前に戻る。ある日の夕暮れ、教室内で、告白する、南 華林)
華林「先生と、結婚したい。」
(男としての本能も疼いたが、グッとこらえ、自分の経済的立場を話す、杉田一平。)
一平「・・・・ごめん、今俺、インターンで先公やってっから、ガチで華林を幸せには、出来ない。」
(過去のトラウマが、引き金になったのか、一平の一言で、蓋をしていた筈の闇、即ち、心の底では、誰も信じられなくなっていた華林が顕れた。)
華林「あ、そう?・・・そーやってあんたも逃げるんだ・・・どーせ私は、交通遺児だから、ただ、かわいそーだなんて、近づいたんでしょっ!」
一平「華林、それはちげーぞ。」
(いきなり、制服をボタンを、自分を急かすように外す華林。)
華林「男なんて、皆同じ・・・」
一平「やめろ。・・・意味がない。」
華林「嘘だ。ヤりたいならヤりたいって、言えばいいじゃん!」
(下着姿で、一平に抱きつく華林だが・・・突然開く、教室の引き戸に凍りつく二人。)
校長(image柄本明)「杉田先生!何してるんですか!!」
(現実に戻る杉田一平。)
俺は、気がつくと、華林に手を引かれ、チャペルを後にしていた。
(教会下の、砂浜にたどり着く、一平と華林。)
南 華林「・・・」
杉田一平「どーすんだ?華林。三年前の件、校長に土下座して、見合い結婚と引き換えに、教壇に立てるようになったのに。」
南 華林「私を責めるのは勝手だけど、一平。地位や名誉って、そんなに大事?」
一平「・・・・・」
(一平の想い)
俺は、教育者の両親の元に生れた、一人っ子だ。
俺が生まれた頃は、
両親は仲が良かったらしいが、
俺が小学校に上がり出す前から、
夫婦なかは、
段々険悪に成っていった。
まー、今時の、見たくも聴きたくもない、
バットニュースみたいに、
家庭内殺人が無いだけマシだった。・・・・
一平「俺は、中学しか出てねーから、はくが欲しいんだ。」
華林「で?、いーとこの女と、できちゃった結婚して、え?、どっかの家に資産を掻っ払うために、入るんでしょ?名字や、出生まで変えて!」
(感極まって、右手を振り上げる一平。)
一平「いい加減にしろ!」
俺は、華林に、何処まで話せばいいんだろう。
華林「殴るの、いーよ、殴りなよ!・・・どーせ、生きてても、私なんか意味ないんだ、死んじゃえば良かった!」
(わんわん泣き出す華林。困惑する一平。)
一平「バカなこと言うなって!、亡くなった人のぶんまで、前向きに生きないで、どうすんだ?」
(一平の足元にすがり付き、激しく泣きじゃくる華林。)
華林「前向きに生きるって何?、
家族みんなしんぢゃったんだよ!!、
私の心のなかは空っぽなのっ!
未来を見守ってくれる人が、
居ないんだよ!・・・
先生約束したじゃん!、(結婚は無理でも、)私が卒業するまで見守るって!」
一平「それはだな?」
(花嫁の父と、仲人の校長が、一平たちに近付いてきた。)
花嫁の父(image奥田瑛二)
「これは一体何だね?、えぇっ!?・・・
私の娘に対する侮辱か?!おいっ!」
校長「すっ、杉田くん、君って奴は、まだ、そんなカネクイムシに、チョッカイ出してるのかね!」
華林「金食い虫ってなんだよっ!」
(校長のネクタイを鷲掴み、グイグイ前後に振る華林)
校長「フン、たかが身内が亡くなったぐらいで、・・・
どっかのアジア人見たいに、
税金で、三食食べて、
光熱費を払って貰って、
今度は男アサリかっ!・・・
杉田君はなぁ、
後々町長になってもらわなぁ、いかん人だ。・・・公民党の議員として。」
華林「はぁっ?、それって、政略結婚じゃん!・・・良いの?一平!」
一平「たかが、身内・・・・」
(聞き取った言葉の断片から、一平は、中学校から帰ってきた目の前に、首を吊った父、家のなかを夢中で、母親を探すが、最後に見つけた浴室で、手首を斬り、失血死している母の姿を思い出してしまう。)
校長「な、何をするんだっ、アバズレの野良猫風情が!」
(背広から、スマホを取り出し、高く頭上にかざす校長。)
校長「3年A組、南 華林!・・・警察に通報されたくなければ、名誉退学処分を受けよ!」
華林「名誉退学?!」
校長「そーだ、名誉退学だ。毎年、県内ベストテンには、入りずらかった我が校だが、南華林。君の編入により、たった3年間で、偏差値があがり、今じゃ御三家になった。その礼をしてやるっていってんだ?、大人の優しさに、君は深々と、感謝すべきではないのかな?(笑)」
華林「確かに、大人のお陰で、高校まで行けたけど、冗談じゃない。杉田先生が支えてくれたから、頑張れたんだ。一人ぼっちの私に力を貸してくれたから、今日までこれたんだ。」
(あきれてその場を立ち去ろうとする、花嫁の父。)
花嫁の父「やってられん。、期待をもって結婚を望む、うちの娘が可哀想だ。校長。学費支援、来年度で、打ち切らせてもらう。いいな。」
校長「ちょ、ちょっと待ってください。」
(花嫁の父を追う校長の隙をつき、一平は、右ストレートを、校長に浴びせてしまう。)
華林「い、一平?!」
一平「たかが、身内だと?」
校長「くっ、クビだ!杉田君、今すぐ出てけ!」
(仰向けに倒れた校長の上で、マウントを取り、胸ぐらを締め上げる一平。)
一平「ふざけんなよ!、親が先に、突然亡くなった子供が、どんな想いをして、生きてきたか、わかってんのか!」
(再び殴ろうとした一平を、背後から、抱き締めて、必死に食い止める華林。)
華林「わかった!。わかったからっ!、もうやめて!、一平の人生まで、おかしくなるから、ねぇっ!」
(我に返り、立ちあがり、校長に一礼してその場を立ち去る一平。後を追う華林。)
数年後、
俺らは結婚して、子供が一人生まれ、狭いながらも、アパート暮らしをしている。
(夜中に泣き出しそうな、赤ちゃんの声を聞き、赤ちゃんを抱き上げ、そっと玄関へ向かう一平。)
華林「大丈夫?徹夜明けだったんでしょ?」
一平「いいから、寝てな。(  ̄▽ ̄)」
今夜も、海辺に映る月が、綺麗だ。
(おわり。)