空想携帯小説家ht2355(20120708)'s blog

空想携帯小説家(山本 繁一)の作品を公開しています。

エンジェル 君の歌は僕の歌 2020(scene1992東宝)

三話 「    命の価値    」

(天使たちとの会話を思い出しながら、ゆりの行方を捜し、街を疾走する、大川淳)

 

淳「う、嘘だ。(ゆりが、死ぬわけない!・・・・死ぬわけない!)」

 

(大川淳の回想)

六路凜祢(むつみ りんね)

「入沢ゆり。あなた、大川淳が思いを寄せる女は・・・・」

 

死亡確定書を握り締め、動揺する淳に、諦めろと言いたげに、ビジネスバックから、懐中時計を取り出す凜祢。

 

凜祢「・・・・悪いけど、あんたの彼女。あと、2日で亡くなるわ。」

 

淳「う、嘘だ。ゆりが、なんで?」

凜祢「大分前から・・・・」

 

首を横にふり、凜祢の言葉を遮る、神係爽子。

 

淳「な、なんだよ。ばぁちゃん、あんたもガチで、天使だったのかよ!」

 

爽子「ごめんなさい。今は、・・・・元天使として、言葉を選べば、」

 

爽子は、懐から、白銀に輝くペアリングが入った小箱を、淳に差し出した。

 

淳「ばあちゃん。・・・・これ、」

 

爽子「貴方が、あの人の、甥っ子だと知ったから言うけど・・・・後悔しないように、今をしっかり生きて。」

 

(真昼の街中を疾走する淳は、かつて眠れぬ夜を、二人で過ごした牛丼屋や、コンビニ、野外のカフェを捜し回るが、ゆりの姿が見つからず、ヘトヘトのまま、その場を膝をつき、空を仰ぐと、無情にも、静かに雨が降りだした。)

 

(淳の回想)

白銀のペアリングを渡した爽子に、意見する凜祢。

 

凜祢「二度と人間に関わらないように、罰を与えたのに、いまだに干渉するなんて、とんでもない話ね。」

 

微笑する、爽子の体が輝きだし、指先から、光のかけらが、空に舞い上がる。

 

爽子「下の世界に、居すぎたせいかしら・・・命の儚さが、いとおしくてね、仕方ないの。」

 

手を握ろうとした、淳の目の前で消滅する神係爽子。

 

淳「ばあちゃん・・・・。」

 

呆れたように溜め息をつく、六路凜祢。

 

凜祢「もう、この世界も、私が悪知識を吹き込んだ、愚かな人間により、滅ぶことは、避けられない。」

 

大川淳

「何だよそれ。なんの権限があって、人間の命を弄ぶんだよ!」

 

淳を嘲笑う天使。

 

六路凜祢

「は?弄ぶ?・・・それが、人間(あんたら)の、命の価値だから。(笑)」

 

淳「命の・・・価値?」

 

六路凜祢

「驕り、偽り、見下し、怒り、他人を試みない愚か。 こんなことばかり続けて、戦火や大災害を降す度に、その場で反省や、後悔しても、月日が経って忘却する、こんな人間たちがのさばるなんて、ただただ、許せないの。(笑)」

 

大川淳「何だよそれ。」

 

(淳の回想が一旦終わると、入沢ゆりは、空港のゲート前で、腕時計を見ながら、執拗に、出発時間を確認している。  淳は、小雨に打たれながら、神係爽子から貰った、ペアリングを取り出して見つめている。)

 

淳「ばあちゃん。やっぱり、だめだわ、俺。」

 

(ブランドショップの店頭にある、天使のオブジェから、項垂れる淳を見詰める六路凜祢。)

凜祢

「フッ・・・情けない。もう少し硬骨な人間(やつ)だと思ったのに。」

 

(天を仰ぎ、ため息をついた淳が、叔父の、大川竜彦との回想する。)

 

竜彦のオーストラリア移住に伴い、淳を、鎌倉までのドライブに連れていったその日の帰り。

(夕暮れ空から、小雨が振りだす。)

 

淳(少年期)

「おじさーん、車置いて帰ろうよぉ~」

 

大川竜彦

「いや、ダメだ!」

 

「明日から、オーストラリアに行くのに、間に合わないよぉ?」

 

助手席から、ちょこんと顔をだし、竜彦に問いかける淳。

竜彦は、水色のビートルの、後部エンジン内の故障箇所を、まさぐるように修理している。

 

竜彦

「淳。おまえさぁ、クラスのなかで好きな子いるか?」

 

淳「なんでぇ?」

 

車の後部ボンネットを閉め、

ため息に近い、含み笑いをする、竜彦は、びしょ濡れのまま、運転席の窓から顔を出す。

淳は、自分のリックサックから、タオルを竜彦に渡す。

 

竜彦

「お前はまだ、小学生だから、まだわからないだろうけど。きっといつか、お前の大好きな、イチゴミルクのかき氷を越える、恋人(かのじょ)が出来るさ。その時に、いった意味がわかるさ。」

濡れた髪を、運転席で拭き終わると、エンジンをかけ、車を発車させる。

(回想を終え、何かを思い出す淳。)

大川 淳「おじさん。」

(一方、空港内で、突然吐血し、荒い呼吸のまま、横たわる、入沢ゆり。)

 

外国人老紳士「あんた、大丈夫かい?」(英語)

(頷く、ゆり。)

 

空港グランドスタッフ

「離れてください!感染症の恐れがあります!離れて‼️」

 

入沢ゆり「(ま、まいったなぁ・・・こんなとこ、アイツに見せらんない。)」

(遠くで、ゆりの名前を呼ぶ、男の声が聴こえる。)

 

ゆり「(う、嘘だよね。・・・あいつが、・・・淳が・・・・来るわけ・・・・)」

 

(ゆりの瞳のなかに、淳が映る。)

大川 淳「ゆり!・・・ゆりっ!」

(救急車🏥🚑️に乗せられるゆり。同車を願い出るが、防護服の救急隊員に拒絶される淳。・・・・都心の大学病院に担ぎ込まれるゆり。淳は、水色のワーゲンビートルで、一歩遅れて、後を追うが、ここでも感染リスクを考えてくれと、待合室で待つ事になる。)

 

六路凜祢「残念ね。」

 

(待合室の長ベンチで、背中合わせに座っていた、六路凜祢が、呟く。)

 

大川 淳「何しに来た?人殺し。」

鼻で笑う凜祢。

 

六路凜祢「ご無体ね。人間の寿命は、予め決められてる訳じゃないの。」

 

淳「あんた、さっきと言ってることが、矛盾してないか?」