幸子:涼太からの貸しって、
私の初恋話だ。
誰かが、誰かを好きになる・・・・
それは、誰しも必ずあること・・・・
私の場合、
あのときだけ・・・
女の子が好きだった・・・。
(高校時代・幸子の回想)
幸子:あれは、いつかのバレンタインデーだった。
(体育倉庫の裏、可愛い包装とリボンで括られた、チョコレートと、少々のかすみそうを背後に持ちながら、誰かを待つ幸子。
そこに、走り寄る女生徒。)
幸子「ごめんね、突然呼び出して(笑)」
下級生:日奈子(image桜井日奈子)「何ですかぁ、改まったはなしって?(笑)」
(もじもじしながら、チョコレートと、かすみそうを渡す幸子。)
幸子「あ、はいっ!これっ!」
(日奈子は、一瞬喜んだが・・・)
日奈子「先輩・・・気持ちは嬉しいんですけど・・・」
幸子「え?(笑)」
(柔らか目な言葉を探す日奈子。)
日奈子「私たち、そんなかんけいじゃぁ・・・・無いですよ・・・ねっ?」
(人影の少ない体育倉庫の裏とあって、日奈子にグイグイ迫る幸子。)
幸子「そ、そんな関係って?・・・わたし、日奈ちゃんの事・・・」
(キスしようとする幸子を、完全拒絶した日奈子。)
日奈子「やめてっ!・・・先生と相談して❗」
(チョコレートと、かすみそうを落とす幸子。)
幸子「え?・・・ワケわかんないんですけど・・・」
日奈子「わたし、高校を辞めて、結婚するんです。・・・・」
幸子「そんな・・・」
(膝を落とし泣き出す幸子を置き去りに、立ち去る日奈子。
そして、サッカーの部活を終えた、涼太が日奈子と入れ違いで、幸子に声をかける。)
涼太「ねぇちゃん?・・・ねぇちゃん、大丈夫?」
幸子「私、・・・振られちゃった・・・。私、女の子を好きになっちゃ・・・可笑しいかな?」
(涼太は、一瞬引いたが、幸子の想いを理解した。)
涼太「ねぇちゃん、カラオケ行こう‼(笑)」
幸子「いまそんな気分じゃない・・・・」
(傷心の幸子を立ち上がらせ、ハグして慰める涼太。)
涼太
「ねぇちゃん、メソメソしたって、仕方ないじゃん‼(笑)・・・
こー言うときは、
ぱあっと、
こう・・・(北島三郎の力むマネ)
大声だして、スッキリしちゃおうよ‼(笑)」
幸子:いま考えると、涼太
はカラオケはヘタクソだったなぁ(笑)・・・・
そして、高校をでても働く気に成らなかった私に、涼太が・・・
夢を与えてくれた。
(ぷーたろう時代の幸子の回想)
幸子:そんな涼太の奴、
昔っから、お金もそんなに持ってないのに、
ボロアパートに引きこもって居た私に、
よく差し入れを持ってきたっけ・・・
(二人分の牛丼を置く涼太。)
幸子「なあに?・・・また買ってきたの?」
(山積みになった、就職誌をパラパラめくる涼太。)
涼太「ねぇちゃん、大学行かないんだったら、アルバイトしなよ(笑)・・・生活行きつまっちゃうよぉ。」
幸子「(両親から、愛想つかされ、仕送りが尽きて)もう、いきつまってますが、なにか?(笑)」
(涼太は、座る場所を作るために、雑誌などの山を移動させた。
その時に落ちた、一冊のノートを拾い上げる涼太。)
幸子「あ、ちょっ‼・・・・」
(ぺらぺらと、ページを捲る涼太。)
涼太「ねぇちゃん、これ・・・・」
(驚く涼太から、ノートを引っ剥がすように奪う幸子。)
幸子「ちょっとぉーっ!(怒)」
涼太「ねぇちゃん、凄い文才あるじゃん‼(笑)」
幸子「そんなことないよっ、暇潰しで書き貯めただけだからっ!」
涼太「本出そう‼、ねぇちゃんなら出来るよ‼(笑)」
(涼太が入院した時の回想
ストレッチャーに乗せられ、緊急処置室に運ばれる涼太。
後を追いかける幸子だったが、
看護師達に止められ、やむを得ず、待合室の長椅子に座る、幸子。)
(回想)
幸子:涼太は、ファミレスでの再会後、就職活動しながら、
幸子(わたし)の書き貯めた小説の、
直接出版に向けて走り回っていた。
そんな涼太の優しさに、気付けなかった私は・・・・
(アパートのドアを叩く涼太)
涼太「ねぇちゃん‼ねぇちゃん‼」
(虚ろな目で、ドアを開ける幸子。)
幸子「なあにぃ・・・・私なんか放っといて・・・」
涼太「(うぅわ、酒くせぇ~)ねぇちゃん、直接出版は、いろいろ(お金)が掛かるから・・・・」
(涼太は、酒びたりの幸子にドン引きながらも、新人小説家デビューコンテストのチラシを、幸子に広げるように見せた。)
幸子「あたし(の才能)なんか、どーせ・・・・へへっ(笑)」
(涼太は、
経たり混む、幸子の胸ぐらを掴み引っ張り上げて、
一瞬ためらったが、
右手で幸子の左ほほを叩いた。)
幸子「痛いっ‼」
涼太「どうしようもない奴だね・・・ねぇちゃんは‼」
(涼太の、いままで見たことのない、真剣な眼差しに、泣き出しそうになる幸子。)
涼太「なんで、自分を押さえ込むんだよ‼ねぇちゃん‼・・・ぼくは、そこまで頼りないかよ‼」
幸子「涼太・・・ちがう・・・ちがうの・・・」
(嗚咽を押さえながら、泣き出す幸子をハグする涼太。)
涼太「ねぇちゃん・・・僕が望むのは、幸子ねぇちゃんの幸せなんだ。」
幸子「でも、涼太は・・・一人ぼっち・・・」
涼太「ぼくは、一人じゃないって(笑)・・・ねぇちゃんともう一回、巡り会えたんだか・・・らっ」
突然、腹部を押さえながら、前のめりに倒れて、苦しむ涼太。
幸子「りょ、涼太っ‼」
声も出せぬほど、痛みにもがき苦しみ、大量の汗をかく涼太。
幸子「りょ、涼太っ‼大丈夫?・・・ねぇ‼涼太ぁっ‼」
(回想を掻き消すように、医者が幸子を呼ぶ。)
医者「あなた、羽生涼太さんの、ご家族のかた?」
幸子「あ、えっ?・・・幼・・・馴染みですっ。」
(医者より、涼太が大腸がんの疑いがあると伝えられる。)
大島幸子「完治、するんですよね?」
医者「ですから、詳しい検査を・・・・」
声を上ずらせながら、土下座をする幸子。
幸子「おねがい・・・・・おねがいします😭✨おねがいします😭✨おねがいします😭✨どうか、どうか、涼太を、涼太をたすけてぇっ‼・・・どうか・・・お願いします😭✨・・・・」
床に何度も何度も、頭を擦り付けて懇願する幸子に、あきれる医者。
医者「最善を尽くしますが、念のため、覚悟をしていてください。」
幸子:わたしは、今まで神様も仏様も信じて無かったけど・・・・今は違う。涼太だけは、助けて欲しいと、心から思った。
取り返しが付くか、どうか、判んないけど・・・
(数週間後、涼太が入院する病院のナースセンター)
看護師「あら、大島さん!・・・いーとこ来た!(笑)」
(うつ向きながら、真新しい、男性の肌着や下着の入った紙袋を渡す、幸子。)
幸子「あのっ・・・アイツ、すんごい汗っ掻きだから、・・お願いします。」
看護婦長(image石野真子)「自分で渡したら?(笑)」
看護婦長が
通路を見ろとばかりに、顎で指し示すと、車椅子に乗った、涼太が現れた。
幸子「あ、」
涼太「ねぇちゃん‼(笑)」
幸子「大丈夫なの?」
涼太「ん~、まだ数ヵ月は、抗がん剤とか、色々だけどね(笑)」
(車椅子越しの、涼太をハグする幸子。)
涼太「いたたたたっ‼・・・お、折れる!、折れるっ!、折れちゃうってっ!(笑)」
幸子「ご、ごめん・・・つい、力が・・・(笑)」
涼太「て、病人を殺す気かっ!(笑)」
(微笑む二人。・・・それからまた、数ヵ月後、新人小説家デビューコンテストの会場)
一流ホテルの大広間に、老若男女の人々が、まるで立食パーティーみたいな状態で、ひしめき合っている。
涼太「ねぇちゃん、凄いね?参加者と同伴者は、タダ飯だなんて(笑)・・・」
幸子「う、うん・・・・私は、あんまり、こう言うところは・・・ちょっとぉ~😅」
(涼太が、綺麗な女の子に見とれてるうちに、こっそり会場を抜け出そうとした次の瞬間、会場を割れんばかりの拍手が鳴り響いた。)
司会者「さてぇ、宴もたけなわですが、今回の、新人小説家デビューコンテストの主催者で、衆議院議員の藪沢梅子先生にご来場願いました。(笑)」
(満場一致の大拍手が巻き起こるが、登壇するのかと思いきや、背後から現れる藪沢。)
藪沢梅子(image泉ピン子)
「どーも、どーも、藪沢で御座いますぅ(笑)・・・・あ、涼太ちゃぁん!(笑)」
羽生涼太「あ、おばちゃん、酒太りしたぁ?(笑)」
梅子「いやだわ、涼太ちゃんてば(笑)」
大島幸子(image松井玲奈)「ゲッ?(銀縁眼鏡婆ぁじゃん‼)・・・」
藪沢梅子「・・・・げ?( ̄ー ̄)」
大島幸子「あ、いえ・・・何も(^^;(やぁばっ‼)」
幸子と藪沢がにらみ会うが、
司会者が、藪沢を登壇するように促す。
藪沢梅子「今回の新人小説家デビューコンテストは、単なるマスメディア向けの、話題作りでぇわなぁくぅ~、今日の日本の活字場馴れを、私は、深く深く憂いて・・・」
しらける参加者達。
司会者「あの、先生?・・・・恐れ入りますが、発表の方を・・・」
藪沢梅子「あによぉ~、これからだっつうのにっ‼(怒)」
ごそごそと、小豆色のビジネススーツのうちポケットより、茶封筒を取り出す、藪沢。
幸子「涼太?・・・あのババア、知り合い?」
涼太「うん、鎌倉のおばさんだよ。(笑)」
幸子「・・・・えっ?(笑;)」
わざとらしい咳払いをして、茶封筒から、一枚の紙を取り出すと、もう一度、咳払いをする藪沢。
藪沢「最優秀賞は・・・・」
生伴奏の、ドラムロールが鳴り響く
息を呑む、幸子と涼太。
藪沢「smile again・・・大島幸子さんっ‼」
幸子「は?・・・・うそっ?・・・・」
司会者「大島幸子さん、いらっしゃいましたら、ご登壇願いまーす。(笑)」
脳内呆然の幸子。
幸子「(○◇○;)ぽかーん。」
涼太「ねぇちゃん?・・・・ねぇちゃんッ‼」
幸子「(○_○)!!・・・・涼太?・・・・これって、できレースじゃないよね?(疑心暗鬼+猜疑心全開!)」
涼太「僕のおばさん、藪沢梅子は、昔、鎌倉の読女と呼ばれてたんだよ。・・・・僕のために、小細工はしないよ。(笑)」
司会者に促され、登壇する幸子。アシスタントに手渡された賞状を、幸子に渡す時に、ぼそっと呟く藪沢梅子
梅子「この女狐・・・」
幸子「え?」
梅子「涼太ちゃんを渡すもんか‼」
幸子「・・・(なんでぇーっ?)」
幸子:こうして私は、うだつの上がらなかった人生を、涼太の力を借りて、小説家として、軌道修正した・・・。
でも・・・
涼太に想いを告げるチャンスが、遠退いた気がするなぁ・・・
(終わり)